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中国メーカーの傘下となったボルボ、何かが変わる?
2010年、自動車業界にとって衝撃的なニュースが発表されました。スウェーデンを代表する自動車ブランドであるボルボが、中国の自動車メーカー(ジーリー)を傘下に持つ浙江吉利控股集団(ジーリーホールディングス)の傘下となることが明らかになったのです。このニュースには多くの人々が驚いたことでしょう。
◯合従連衡によって生きながらえてきた自動車産業
一方で、1990年代以降の自動車メーカーの多くは、単独での経営が難しく、他メーカーとの合従連衡によって、なんとか存続の道を模索してきました。日産はルノーの資本を受け入れたことで復活し、ロールス・ロイスとベントレーはそれぞれBMWグループとVWグループの傘下となることで現在に至るまでそのブランドを保持しています。かくいうボルボの乗用車部門もまた、1998年にフォードグループへと64億ドルで売却されているのです。
折しも、リーマン・ショックに端を発する世界的な恐慌の中でしたから、フォードグループとしても引受先を探していたことは不思議なことではありません。ただ、その引受先が中国資本のメーカーであったことは驚きでした。
誤解を恐れずに言えば、「中国製」の製品のイメージとしては、安価、チープ、低品質という必ずしもポジティブでないものばかりかもしれません。実際に、20世紀の中国は、その膨大な人口を活かした人件費の安さで「世界の工場」としての地位を確立してきました。同時期の日本は、高品質の電化製品や自動車を生産し輸出することで外貨を獲得してきましたから、その対比もあって「中国製」を低品質と見てしまうのかもしれません。
◯中国の自動車産業とは
よほどクルマに詳しい人でも、中国の自動車メーカーやモデルの名前をスラスラと言うことは難しいかもしれません。実際にはBIG5と呼ばれる第一汽車、上海汽車、東風汽車、長安汽車、奇瑞汽車に加えて上記の吉利汽車(ジーリー)など含めて10以上のメーカーが存在しています。その多くが中国国内をターゲットとしているために、日本や欧米ではほとんど見かけることはありません。しかし、圧倒的な中国の経済成長率を背景にして、これらのメーカーはすでに世界の主要ブランドと並ぶ資本を手にしていたのです。
一方で、資本を手にした中国が次に欲しいのは、世界で戦うための技術力です。技術力や生産ノウハウなどは一朝一夕でできあがるものではありません。そこですでに技術力を持っている企業を買収するという戦略が採られるのです。中国に限らず、世界中の多くの企業が大小様々な買収劇を演じています。
◯カネは出すけどクチは出さない
上述のような背景を考えれば、中国メーカーの参加になったからと言って、ボルボのクルマづくりの質が下がるということはあり得ません。ジーリーとしても、世界最高レベルの安全性能や生産ノウハウをわざわざ棄損するようなことをするメリットがないのです。
実際に、潤沢な中国資本を手にしたボルボのクルマは、品質が下がるどころか、依然として世界の市場をリードしています。2012年に発表された新型V40は、新生ボルボ初のモデルですが、世界初の歩行者エアバッグを搭載するなど、その技術力は衰えてはいません。
その後も、フラッグシップSUVであるXC90や、プレミアムセダン/ステーションワゴンのS90/V90、さらに日本カー・オブ・ザイヤーを獲得したミッドサイズSUVのXC60など、魅力的な製品を多く提供しています。
逆に、ジーリーが持つ中国市場での販売ノウハウを手に入れたことで、中国市場での売上も大きく伸長しています。日本を含む諸外国での売上も概ね好調ということもあり、ジーリー傘下となった後のボルボは、息を吹き返しています。
◯新興国の経済成長が先進国のブランドを助ける
これまで、自動車メーカーを持つ国は世界でも限られていました。それは多くの資本と技術力を必要とするため、いわゆる新興国では世界で戦えるだけのメーカーが育ちにくい環境だったのです。一方で、2000年代以降の新興国の経済成長は、欧米諸国や日本と比べて、目を見張るものがあります。今回の中国の事例以外にも、インドのタタグループが、ボルボと同じフォードグループからジャガー・ランドローバーを買収しました。旧宗主国であるイギリスの名門ブランドをインドが買収することになるとは、大昔の人々は夢にも思わなかったでしょう。しかし、この買収によってジャガー・ランドローバーは復調しています。
新興国の資本によって先進国のブランドがよみがえる、という事例は、今後決して珍しいものではなくなるのかもしれません。
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