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TVドラマ「セイント 天国野郎」で有名になった、P1800
「セイント 天国野郎(原題:The Saint)」はレスリー・チャータリスの冒険小説を原作としたイギリスのテレビドラマシリーズで、1962年から1969年まで、118のエピソードが放送されました。このドラマは、英国とアメリカで大きな成功を収めたのち、世界80か国以上で配給されました。この作品に登場して一躍有名になったのが、P1800です。
■“あのセイントが乗っていた”P1800
「The Saint」は、後に007のジェームス・ボンドで有名になるロジャー・ムーアが演じたサイモン・テンプラー(通称セイント)という大怪盗が、世界を股にかけて活躍するアクションドラマです。
視聴者は、主人公のセイントに魅了されただけではなく、主人公が乗り回していた白いP1800クーペに引き込まれた者も少なくありませんでした。当時、ドラマを観ていた方にとっては、P1800がどこのメーカーのどんなクルマか説明するよりも、「あのセイントが乗っていた車」と説明した方が馴染み深いのではないでしょうか。
このドラマの撮影に使用された1800Sは、ロジャー・ムーア自身が所有。1966年11月に製造されたパールホワイトの1800S(P1800には、トランケイテッドスポークデザインのミニライトホイール、ヘラ製フォグランプ、ボルボ製ウッドステアリングが装備されていました。
■P1800の歴史
P1800は、1959年初頭に新しいスポーツカーとして発表されました。この車のデザインは、イタリアのコーチビルダー ピエトロ・フルアに在籍していたペレ・ピーターソンによるもので、イタリアの優雅な曲線美を用いた美しいクーペは、それまでのボルボのイメージとは異なるものでした。
P1800のボディ生産は、外注されることになり、イギリスのジェンセン社が受注します。ところが品質上の問題が発生し、1963年に生産拠点をスウェーデンに移管。これ以降、1969年まで製造されたモデルは、数字の前のPを取り、後ろにスウェーデン製造を意味するSを加えた1800Sと呼ばれることになります。
搭載されたエンジンは、1.8L 4気筒。トランスミッションは4MT。出力は、100bpsでしたが、1968年には108bhpに引き上げられ、1969年には120bhpとなります。
1970年になると、フロントグリルやホイールデザインを一新。エンジンは、130bhpを発生するB20E型となり、車名も1800Eへと進化しました。
これにより最高時速がシリーズ最高の190km/hに達し、0〜100km/hは9.5秒。性能向上にあわせて、4輪ディスクブレーキが採用されますが、1972年で生産終了となりました。
1800Eの後継としてデビューした1800ESは、クーペスタイルからシューティングブレーク的なワゴンスタイルになります。エンジン出力は125bhpに低下しましたが、実用的になりオートマチック車両も選択できるようになりました。P1800ESのデザインは1枚ガラスのガラスハッチが採用されるなど斬新な物になりましたが、基本設計が古いがゆえに時代遅れとなってしまい、1973年を最後に生産が終了しました。
P1800は北米での人気が高く、日本でもヤナセによって販売されていました。現代でも一部の愛好家の間では取引されており、中古市場でも目にする機会があります。いまなお、P1800のボディフォルムからはセクシーな印象を感じられます。
ボルボカーズの社長兼CEOであるホーカン・サムエルソンは「ロジャー・ムーア氏の『The Saint』は、60年代の私の大好きなテレビ・ドラマでした。そこで見て以来、私はP 1800が欲しくてたまりませんでした。この車はこれまでで最も伝説的なボルボ車であり、スカンジナビアン・デザインの素晴らしさを伝える一例です」と語っています。
「The Saint」をご覧になる機会があれば、ぜひP1800の登場シーンにも注目してください。