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2016/4/1 What's VOLVO

850 R

撮影協力:vodka champagne MiG

 

 

「小さな頃から乗り物が好きでしたね。バスに乗るときはいつでも運転手の後ろ。遊園地でもタイヤが付いたアトラクションへ一目散。小学校の文集には『電車の運転士になりたい!』と書いてありますし、ミニカーやプラモデル、ひと通りのものに手を伸ばしました」。そう語るのは武藤真司さん。

現在は某大手鉄道会社に勤務。昔からの夢であった電車の運転士となった。乗り物好きの少年は運動能力にも長けていた。「自分の限界に挑戦するような、ストイックなスポーツに惹かれます。かつてはフルマラソンにも参加していましたし、今では時間を見つけては山歩きに出かけています」。

 

 

 

結婚して10年。昨年、武藤家には待望の第一子が誕生した。「伶奈と言います。僕に似て活発なんです。奥さんに怒られるぐらい甘いパパですね」と武藤さん。運転士の仕事は週5日の勤務の内、3日は会社に宿泊する。睡眠は短く、浅い。そんなハードな勤務を終えて帰っても、伶奈ちゃんの無邪気な笑顔と「パパ、パパ」の呼びかけで一気に癒されると言う。今までは自分中心だった毎日が、すべて子供中心に。テレビを見ながらの食事も、伶奈ちゃんのために止めた。また最近は、近所にある大型スーパーへの散歩が家族の日常となった。

奥さんも同じ鉄道会社で旅行代理店業務を担当しているため、夫婦の休み時間はなかなか揃うことがない。「二人の休みが重なったときはなるべく遠くへ繰り出し、伶奈にいろんな世界を見せたいと思っています。先日もなばなの里へ出かけ、チューリップの花畑を眺めました。伶奈も花が好きなので楽しんでいましたよ。もう少し大きくなったら、ディズニーランドへ出かけたいですね」。チャイルドシートの背中から伶奈ちゃんの顔をやさしく覗き込む武藤さん。そしてその姿をほほえましく見つめる奥さん。家族の様子から、楽しんで子育てをしている様子が伺えた。

 

 

そんな武藤さんが選んだのは、96年式ボルボ850エステート。免許を取得してから5台目で本当の理想に出会えたそうだ。武藤さんの惚れるクルマにはひとつの傾向がある。─それは「スクエアである」こと。最初に購入したのはクレスタスーパールーセント。クリーム色のボディにスーパーホワイトを全塗装した。2台目はツートンカラーのローレル。そしてスキーにはまっていた頃に購入した3台目は、四角いオーバーフェンダーが特徴的なビッグホーン。4台目の97年式ステップワゴンに至っては、「触れるところはほぼ全て触った」と言うほど、オリジナルの仕様になっていたとか。

 

 

ボルボ850とは運命的な出会いだった。夫婦で冷やかし程度の気持ちで足を運んだショップで、二人ともが心を射抜かれた。「850は四角い中にもわずかな丸みがあり、そのバランスが絶妙なんですよね。赤いボディーカラーもボルボほど似合うクルマはないんじゃないですか。人目をひく色ながら上品。派手すぎず大人しすぎずのニュアンスが気持ちいいんです」。

ホイールはお気に入りのBBSを装着。より愛車にマッチするようにシルバーポリッシュからガンメタに塗装を施した。さらにスタイルを極めるため、バンパーをボディに合わせて赤にカラーリング。リアのテールランプはV70用のものに変更し、エンブレムは新品に付け直した。エンジンルームはアーシングをし、プラグワイヤーをシリコン製に変更。またサスペンションやスタビロッドも付け替え、走行性能を高めている。丁寧かつ万遍ないチューニングが見て取れるが、これらはすべて独学だというから驚きだ。「クルマは好きですが、知識はほとんどありませんでした。850に乗り始めてからは『ボルボ』と付く本は片っ端から読み漁ったり、記事をスクラップして情報を蓄積したりし、少しずつ知識を蓄えていきました」。

 

 

生れも育ちも岐阜県の本巣市。昔は田んぼや柿園にあふれていたこの地も、大型ショッピングセンターなどが建ち景色が一変した。それでも武藤さんは、仕事や旅行から40年近く住むこの街に戻ると心が落ち着くそう。また一目惚れした850も、乗り物に憧れた幼い頃の武藤少年に戻る、大切なツールになっているようだ。

 

 

 

愛着のあるこの街で、ずっと850に乗るのが武藤さんの夢だ。「ただ今の走行距離は7万9000キロ。まだまだこれからのクルマなんです。消耗品をしっかりと変え、メンテナンスを怠らなければ、いつまでも乗れるクルマだと思っています。もっとも、あまりお金をかけないよう、奥さんからきつく言われていますが(笑)」。

 

 

 

最近、武藤さんは助役となり、運転士・車掌として弟子を抱えるようになった。ハードな業務と中間管理職という立場で一時は体調を崩したこともあったが、今はすっかりリフレッシュし、新たなステップを歩もうとしている。「助役である前に、僕は武藤真司なんです。役職に気負いせず、自分がやりたいことを素直に見つめていきたいですね。伶奈の成長も楽しみです。いつまでも頼れるパパ、そしてかっこいい男であり続けたいと思っています」。これからもずっと850に乗り続けると言う武藤さん。チャイルドシートで眠る伶奈ちゃんが助手席に座り、運転する父親との会話を楽しむ日も遠くない。スクエアな850は、家族の素敵なコミュニケーション空間として機能することだろう。
Photographs by Noriyuki Washizu Text by Eiji Kito Creative Direction & Art Direction by Akihiro Imao