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ボルボ240ターボのレースシーンを振り返る。
ボルボのモータースポーツを語る上で、1991年に登場した240ターボの存在を抜きには語れません。デビュー当時から世界中の注目を集めた240に、ターボチャージャーを装着したスポーツモデルは、やがてレース界を震撼させる活躍をみせる存在に成長します。そう、「空飛ぶレンガ」伝説の始まりです。そんな240ターボの詳細とレースでの活躍を振り返ってみましょう。
■ボルボ240とは?スペックや誕生の経緯
1974年8月、ボルボは240シリーズを発表しました。240シリーズは2ドアセダンの「242」、4ドアセダンの「244」、そして5ドアワゴンの「245」をラインナップしていました。
エンジンは、2.0Lの直列4気筒OHVと、新しく作られた2.1Lの直列4気筒SOHCが用意され、そのうち日本に導入されたのは、123psを誇る燃料噴射仕様の2.1Lエンジンのみ。ちなみに初期の244には、PRV(プジョー、ルノー、ボルボの共同開発)の140psを発生する2.7L V6エンジンを搭載したモデルも短期間だけ販売されました。
1979年には乗用車で初となる、直列6気筒のディーゼルエンジン搭載モデルを追加。1981年には、2.1Lにターボチャージャーを付けた240ターボが登場します。
240ターボの2.1Lエンジンは、最高出力155psを発生し、0-100km/h加速は約9秒、最高速度は195km/hを実現。セダンとエステートに搭載され、240ターボエステートは、当時世界最速のステーションワゴンとなりました。
また安全性にも長けていた240シリーズは、前後の衝撃吸収ゾーンの拡大など厳しい安全基準に沿って開発され、米国当局により安全開発の標準車両として使用されたほどの実力を兼ね備えていました。
この240シリーズは、2度の大きなフェイスリフトを経て、20年近く生産され、シリーズ累計280万台を超える車両が世に送り出されました。
■ レースシーンにおける240ターボの活躍
1982年からヨーロッパツーリングカー選手権(ETC)に、インターナショナルグループA規定が導入されたことを受け、ボルボは240セダンで参戦に乗り出しました。
当時のグループAレギュレーションは、毎年5,000台以上の製造されている市販車で、座席は4座以上、さらに500台のエボリューションモデルの製造も義務付けられていました。
1983年に登場したエボリューションモデルには、大径のターボに改良されたエンジン制御システム、さらにインテークに水を噴射した吸気温度下げる(ボルボが開発特許をもつ)ウォーターターボトラクション技術などを投入。十分な戦闘力を備えていました。
そして本格的にレース活動を開始した1984年、参戦1年目にして2度の勝利を収めたボルボチームは、翌1985年になると、2つのチームとファクトリー契約を結ぶことで、チーム間で相互に競わせながら、ローバー(ヴィテス)、BMW(635CSi)、アルファロメオ(GTV6)などのライバルに勝つ体勢としました。
それと並行して、当時大人気だったドイツのツーリングカーレースシリーズ(DTM)にも参戦を開始。当時のDTMの主力は、ETC同様に3リッター級のエンジンを搭載したモデルだったこともあり、2.1Lターボを積んだ四角いボルボがレースで活躍することに、ライバルも観衆も懐疑的でした。
レース仕様のボルボ240ターボは、アルミ製のシリンダーヘッドに、ピストン、コンロッド、クランクシャフトは鍛造。ギャレット製ターボチャージャーに、燃料噴射装置は特注のボッシュKジェトロニックを装備し、300psの最高出力を発生。トップスピードは260km/h。
また、ブレーキには4ピストンキャリパーとベンチレーテッドディスクを取り付け、レースで必須の給油システムは、120リッターのハイオクガソリンをわずか20秒で給油するシステムを搭載しました。
DTMに参戦した1985年、ボルボは14レース中6レースに勝利し、さらにETCシリーズのタイトルを獲得することに成功。240ターボはいつしか「空飛ぶレンガ(フライングブリック)」と呼ばれるようになるのです。
また同じ1985年には、フィンランド、ポルトガル、ニュージーランドのツーリングカー選手権、さらにはラリーの舞台でも活躍し、スコットランドラリー選手権でもチャンピオンシップを獲得しました。
その後、ボルボのレース活動において、「空飛ぶレンガ」は740シリーズに受け継がれますが、思うような活躍はできませんでした。そのため、1985年がボルボのレース活動の黄金期といえるでしょう。
市販された240ターボは、現在でもファンの間で高い評価をうけ、高額な価格で取引されています。それには、独特のスタイリングや安全性もさることながら、1985年のモータースポーツでの活躍が大きく影響しています。